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6ミリ強のネジ穴 前編

2022年5月5日

※本記事では、DIY素人の学生が玄人目にはあり得ないことをやらかす様が含まれるかもしれません。

 2022年4月17日、日曜日。泣きながら清々しく目覚めた今日だったが、終わってみると本当に楽しい一日だった。長くなるが、前後編に分けて記録したいと思う。

 4年前のこと、友人に頼まれて家具を解体した。丈夫で年季が入っており、ひとつのネジが固着してどうしても外れなかったので、工具をたくさん持っている私に何とかできないか相談が来たという経緯だった。プラスの切込みにしっかり合うドライバービットを電動ドリルに装着し、フルパワーで引き金を引いてみてもうんともすんとも言わない。色々なスプレーを吹いてみても状況は変わらず、金槌で叩いてもダメ。頭にきて手動ドライバーを力任せにひねったら、ネジ頭がなめてしまった。

 プラスの切込みがえぐり取られ、ドライバーで回すことはもはや不可能。かくなる上は、死んでもらうほかない。なめた頭に金属用のドリルを当て、フルパワーで削ってゆく。ネジ頭にドリルで穴をあけ、キノコの笠に当たる部分を取れば、どんなネジも外すことが出来る。乱暴だが確実だ。

 バキッという音がしてドーナツ状になった、かつてネジ頭だった部分が外れた。これで家具の分解には成功し、穴に残ったキノコの軸に当たる部分も指で回して取り除けた。復元時のために同じ径のネジを購入し、その時はこれで一件落着めでたしめでたしと思っていた。

 その家具を元に戻す必要があると言われたのが数日前である。戻せるように解体した自信があったし、責任感もあったので私は復元作業も請け負った。固着したネジの破壊は大変だが、新しいものをねじ込んで組み立てるのはドライバー1本でできる。その時はそう考えていた。しかし実際作業に当たってみて、4年前の致命的なミスが発覚する。

 ドライバーでネジを回していくが、全く抵抗がない。進んでいく感覚も無いというか、ネジ足が穴にするりと落ち込んでいるようだ。ネジ山が噛み合わず、完全に空回りしている。どうやらドリルでネジ頭を破壊した時、一緒にネジ穴まで削り広げてしまっていたらしい。本来6ミリのネジで固定するはずだったのに、それを受け入れるはずの穴がゆるゆるになってしまっているのだ。4年前のミスでできた6ミリ強のネジ穴のため、この日1日走り回ることになる。

 削った金属は戻せない。出来るのはもっと削ることだけだ。まず私は7mmのねじを探したが、ホームセンターを2件回っても売っていない。インターネットで調べても、バイク用の頭の小さいものしか無かった。どうやら7mm規格のネジはほとんど使われることが無いため市場に出回らないようだ。諦めて8mmのネジを買い、6mm強の穴に無理やり押し込もうとしてみたが、当然無理。8mmまで穴を広げるしか無いと思った。

 そしてもう一点問題が発生する。4年前のネジ破壊にも使用した愛用のボッシュ製電動ドリルは、隣県の友人に長期的に貸してしまっている。今日中に回収することは不可能だ。事情により、この復元作業は今日中に終えねばならない。

 この辺りから私の精神状態が怪しくなってくる。7mmネジを探しに行った2軒目のホームセンターはかなり大きく、フードコートも整備されている。そこで久しぶりに肉でも食べよかなと楽しみにしていたのだが、日曜の真昼間とあって家族連れで賑わっており、よれよれの黒いコートを着た薄気味悪い男が入っていける雰囲気ではなかった。大学に入ったばかりの若さに溢れていた頃なら気にせず突入していただろうなと思うと、歳を取ることの切なさを感じた。ペッパーランチ食べたかったな。

 仕方がないので、帰路の牛丼屋のドライブスルーを利用した。更に先日の記事で触れたカフェモカを飲んだことが無いと思い立ち、少し遠回りしてスターバックスへの車列に並んだ。やはり時間的に混み合っていたが、車内で牛丼を食べて時間を潰した。シアトルの気取った連中には、スタバのドライブスルー待ちで食う牛丼弁当大盛りの美味さは分かるまい。

 重く甘酸っぱいカフェモカは運転席で歓声をあげるほど美味しかったが、同時にこれはいかんと思った。時刻は午後三時。この時間に飲むと、母親譲りでカフェインが効きすぎる体質の私は確実に夜眠れなくなる味がする。飲み残せばよかったのだが、氷の隙間まで綺麗に吸い込みたいほど気に入ってしまったのがまずかった。

 実際は眠れなくなるどころの騒ぎでは済まなかった。昔アラブの偉いお坊さんが恋を忘れた哀れな男に授けたコーヒー・モカマタリ。モカコーヒーの味を真似て作られたカフェモカは、リポビタンd一本で動悸を訴えるしょぼい男には強すぎたらしい。理由もないのに可笑しくなって笑い出したかと思えばペッパーランチと若さへの未練を思い出して泣きそうになるような、情緒不安定な状態に陥った。思考も短絡的になり、いつもの数割増でバカになっていた。

 カフェインの効果が出始めたのが、6mm強の穴に8mmネジを押し付けていた頃である。穴を広げたい。ドリルが要るが手元に無い。完全にハイになった私にこのような状況をどう打開するかと尋ねたら、答えはこうだ。貸してるやつより良いドリルを買いに行こう。

サムネイル画像 いらすとや様

中編に続く